様々な「挿し絵」を描く為のツールがLibreOffice Drawである.Drawでは,アウトライングラフィックスとかベクトル図形と呼ばれる拡大・縮小・再配置が可能な図形オブジェクトを配置することで作図してゆく.
LibreOfficeを起動し,スタートアップ画面から「図形描画」を選択する,或いは,「ファイル」メニューの「新規作成」から「図形描画」を選択するとDrawが起動する.
新しい図版を作成する時には,最終的な仕上がりサイズを最初に調整しておかないと,図版を利用する際に図形が大き過ぎたりなどして後で困る事がある.後で困らないよう,まず最初に図版サイズを調整しよう.
まず,「書式」メニューから「ページ」を選択し,表示される画面で作成した図版の用紙サイズを設定する.
ここではA4サイズ縦向きの設定としよう.設定できたらOKボタンをクリックする.
四角や楕円などの基本図形を描くには,「ツ−ルパレット」
から「基本図形」をマウス左ボタンでプレスして表示されるパレットの適当なアイテムを選択した後,描画エリア上で左ボタンでドラッグ操作する.尚,これらのパレットはドラッグすると別ウィンドウとして表示させておくことが出来る.また,基本図形以外にも「記号シェイプ」や「ブロック矢印」といった種類の既製図形も用意されている.
各図形を連続して複数描きたい場合は,選択したツールアイコンをダブルクリックしておくと,他のツールを選び直すまで選択した図形を描く状態が維持される.
通常の絵筆と違うところは,既に描いてある図形を選択ツ−ルで選択して,適当に位置を移動させたり大きさを変えたりできることである.これは,Draw内部で各図形の形や位置の情報を記憶しているためである.このように形や位置情報を元に扱うグラフィックをベクトルグラフィックス,又は,オブジェクト図形と呼ぶ.
図形の大きさを変更するためにハンドルをドラッグする時,Shiftキーを押しながらドラッグ操作すると縦横比(アスペクト比)を変えずに大きさを変えられる.この操作はMacの各アプリケーションに概ね共通である.
各図形は形と位置だけでなく,外形線の太さや塗りつぶし方などもそれぞれの図形毎に変えられる.その方法は2通りある.
その1.まず図形を描き,次に選択ツ−ルで図形をクリックして,青い■(ハンドル,Handleと呼ぶ)が表示された状態にする.これをオブジェクト図形(以下,オブジェクトと略記)を「選択している」と呼ぶ.この状態でDrawウィンドウの上部の「ツールバー」
より,それぞれ変更したい項目をメニュー選択すると線種や色を変更できる.各図形で変更できる項目は,線種(実線や点線など)・線の太さ・線の色,塗りつぶし方法(色やハッチング(塗り模様)など)といったものである.これらの項目のことを「オブジェクト属性(プロパティ)」などと呼ぶ.例えば,塗りつぶし色を変更したければ,メニュー
から適当な色を選択する.要するに,「まず,変更を加えたい図形オブジェクトをクリックして選択,次にオブジェクト属性を変更」と覚えればよい.
その2.図形を描く前にメニュ−やパレットを選択して,予め,線の太さや塗りつぶしパタ−ンを設定しておくこともできる.この場合,それ以後に描く図形の描かれ方は,全て,それに従うことになる.
変更操作をやり直したい場合は,「編集」メニュ−より「元へ戻す」を選択することで直前の操作を取り消す(Undoと呼ぶ)ことができるので,思い切って操作しても失敗を恐れることはない.
さらに,図形属性を細かく設定したい場合は,図形を選択して右クリック(コンテキストメニュー,Ctrlキーを押しながらクリック)して表示されるプロパティ編集メニュー
より,変更したい項目(例えば「領域」)を選択して表示されるプロパティ編集ダイアログ
を通じて変更することもできる.この場合,変更を確定するには「OK」ボタンをクリックし,変更操作を取り止めるには「キャンセル」ボタンをクリックする.
画面表示を拡大して細かい部分を作業したい場合や画面を縮小して全体を俯瞰したい場合は,ツールパレットから「ズーム」ツール を選択して画面をクリックするか,
或いは,ウィンドウ右下のスライダーを操作するか, または,「表示」メニューから「ズーム」項目からズーム率(拡大率)を選択する.
Drawを起動し,各自,描画エリア内に適当な図形オブジェクトを描いてみて,その線種や塗りつぶし方などを様々に変更してみよ.また,様々な矢印を描いてみよ.
尚,矢印を描くには,ツールバーの矢印ツールから選択する.
矢印の始端・終端はウィンドウ上部のツールバーから選択できる.
また,一度描いた矢印であっても,右クリックから表示されるプロパティ編集メニューより,「線」を選択すると表示される以下のダイアログできめ細かく設定変更できる.
文字の入力を行う場合は,ツ−ルボックスから"T"を選択し,続いて文字を入力したい場所をクリックする.カーソルが点滅して文字入力状態となるので,CalcやWriterと同様に操作して文字入力すれば良い.
入力された文字は「文字枠」として配置され,自由に場所を移動したりサイズを変更したりできる.
また,文字枠をダブルクリックすると,文字編集モードとなる.
フォントやスタイルを文字枠全体で変更したい場合,文字枠をクリックして選択しておき,次にフォント属性パレット
から「フォント」や「文字サイズ」などの各スタイルを選べば良い.また,文字列の一部を部分的にスタイル変更したい場合は,文字枠をダブルクリックして文字編集モードとした後,変更したい部分をドラッグして選択しておいてから同様に操作する.すなわち,ここでも「まずオブジェクトを選択,次に属性変更」の手順で操作すると覚えよう.
また,図形をダブルクリックすることで,図形オブジェクトに文字を書き込むことも出来る.
図形を描き終えた作業結果を次回に利用するためには,ファイルとして保存しなければならない.保存するためには「ファイル」メニュ−から「保存」を選ぶとLibreOffice Writerの時と同じようなダイアログが現れるので,保存するファイルの名前をタイプして指示する.尚,ファイル名には日本語名をつけず,英数字のみを使うようにすること.
ファイルの種類が,OpenDocument の図形描画 (.odg) になっていることを確認してから「保存」ボタンを押す.一度,保存操作を行うと2度目以降は,「ファイル」メニューから「保存」を選択するだけで自動的に同じファイルに上書き保存してくれる.以前に保存しておいたものを残しておきたい場合は「名前を付けて保存」を選択することで,別ファイルとして保存することもできる.
過去に作業したファイルを読み込んで作業を再開したい場合は,「ファイル」メニュ−から「開く」を選択し,表示されるダイアログから開きたいファイルを選択する.
Drawを終了するには,「ファイル」メニュ−から「終了」を選択する.変更操作をまだ保存していない場合は,
といったような警告がでるので,保存してから終了するには「保存」, 保存しないで終了するには「保存せず閉じる」, 終了操作をキャンセルしてDrawの操作を続行するには「キャンセル」をクリックする.
自分の作成した図版に適当な名前(例えば tryout.odg など)をつけて保存し,一旦Drawを終了せよ.その後,もう一度,Drawを起動して保存しておいたファイルがうまく読み込めるかどうか確認してみよ.
各図形オブジェクトはコピー&ペーストして複製することができる.コピーしたい図形を選択しておき,「編集」メニューから「コピー」を選択する.次に,「編集」メニューから「貼り付け」を選択すると,図形を複製して貼り付けることができる.同様の操作は,選択した図形上で右ボタンクリックして表示されるメニューでも行える.ペーストも右ボタンクリックで可能である.
コピー&ペーストを上手く利用して,次のように円形が3つ並んだ図形を描画してみよう.(色は何色でも良い.)
上記の円形は,並び方が少々整っていない.この配置を正確に整えるには,まず整えたい複数の図形を選択する.複数図形を選択するには,それらをトラックパッド(マウス)ポインタでドラッグして囲むか,それぞれの図形をShiftキーを押しながらクリックする.(一般に,Macのポインタ操作で,複数のオブジェクトを少しずつ追加選択する場合にShiftキーを押しながらクリックしてゆくという操作が用いられる.)
複数の図形が選択できたら,「変更」メニューから適切な整列方法を選択する.
各項目は,左端揃え,幅中央揃え,右端揃え,上端揃え,高さ中央揃え,下端揃えに対応している.
上記の3つの円形を「高さ中央揃え」で整頓してみよ.
また,揃えるのではなく,「均等に配置」させることもできる.例えば,上記の3円形の場合,これらを選択しておいてから,「変更」メニューから「分布」を選ぶと表示されるダイアログから指定する.
このダイアログで横方向・縦方向それぞれの均等配置の仕方を指定する.例えば,縦方向には配置調整しない場合は,「なし」をクリックしておく.
上記の3つの円形を「横中央で均等配置」し,さらに,塗りつぶし色を変更して,左から「青」「黄」「赤」として,信号機のように配色を変更してみよ.
さらに,各図形オブジェクトの間には「上下の重なり関係」がある.つまり,次のように二つの図形領域が重なった場合,「上下関係」に従って下側の図形は上の図形に一部隠れて表示される.
この重なり関係を変えるには,変えたい図形を選択し,「変更」メニューから「整列」項目を選択する.「前面へ移動」を選ぶと選択しているオブジェクト図形が「手前」に上がり,「背面へ移動」を選ぶと「後ろ」に下がる.
この上下関係は全ての描画図形の間に存在しているので,単純に「前面へ移動」を選択しても意図した通りに変わらない場合がある.その場合は,「最前面へ移動」を選択すると,「他の全ての図形より手前」に持ってくることができる.
上記の3つの円形に「背景」を追加して,信号機らしく見えるようにせよ.背景は「薄緑」とせよ.
注意: オブジェクトの領域塗り潰し属性として「ハッチング」を選択すると, LibreOfficeが異常終了するので決して使わないように.将来のLibreOfficeのバージョンアップで直ると期待しよう.
複数の図形オブジェクトは,まとめて「グループ」にして,一つの図形として扱うことが出来る.グループ化するには,まとめたい全ての図形を選択してから,「変更」メニューから「グループ化」を選ぶ.グループ化を解除するには,解除したいオブジェクトを選択してから「変更」メニューの「グループ解除」を選択する.
上記で作成した信号機をグループ化して一つのオブジェクトとして扱えるようにしてみよ.
グループ化できたら,それがコピー&ペーストできることや,グループ化を解除してバラバラのオブジェクトに出来ることも確認せよ.
Drawで作成した図はプリンタから印刷することができ,この操作手順ははWriterやCalcの場合と殆ど同様の操作である.
まず,「ファイル」メニューから「プリンタの設定」を選択し,印刷させたいプリンタを設定する.
引き続いて,「ファイル」メニューから「印刷」を選択するとWriterと同様のダイアログが表示される.
プリント出力に利用したいプリンタ名を良く確認し,プリンタに用紙をセットしてから「OK」ボタンをクリックすると印刷が開始される.
機械製図など図形の寸法や配置に正確さが要求される場合,位置合わせを正確に行うための手段として,グリッドとスナップ線の2つが用意されている.
グリッドは,ポインタを「吸着する」点を格子状に配置したものである.グリッド機能を利用するには,「表示」メニューから「グリッド」を選択して現れるメニューから選択する.
各項目にチェックマークが入っているものは,その機能が有効化されていることを意味する.「グリッド線の表示」とは,グリッドを画面表示するかどうか,「クリッド線で位置合わせ」とはポインタの動きをグリッドに吸着するかどうか,「クリッド線を前方へ」とはクリッドを図形の前面に表示するかどうかを指定する.
また,グリッドの細かさを調整するには,「LibreOffice」メニューから「設定」を選択すると表示されるダイアログから,
「LibreOffice Draw」プロパティ(▼印)を開いて「グリッド線」を選択し,「サブ目盛」を調整してから「OK」ボタンをクリックする.標準では,1センチ間隔を基本に細かい刻み10(1mm間隔)となっているが,ここでは例としてサブ目盛を2スペース(5mm間隔)としてみよう.
この状態で描画操作を行うと,マウスはグリッドの「格子位置」に吸着される.これにより,大きさや位置のそろった描画ができる.グリッド吸着が邪魔になった場合は,「表示」メニューの「グリッド線で位置合わせ」項目からチェックを外せば良い.
スナップ線(補助線)は,ウィンドウ上端,又は,左端の「目盛り(ルーラ, Ruler)」部分をプレスし,そのままドラッグすると配置される.このスナップ線は磁石のような働きがあり,マウス操作を「吸着」して揃える働きがある.スナップライン機能を有効化するには,「表示」メニューから「スナップ線」を選び,さらに適切な項目を選択する.
各項目の意味は,グリッドの場合と同様である.
例えば,3つの異なる大きさの四角形の下を揃えるには,揃えたい位置にスナップラインを置き,各図形をこれに吸着させると以下のようになる.
スナップラインは,いつでもドラッグして位置変更でき,また,不要になった場合は,上部(又は左部)のルーラまでドラッグして離すと消える.
グリッド線を機能させ,以下のような格子模様を描画してみよ.
グリッド線を機能させ,以下のような電気抵抗素子図を綺麗に美しく描画してみよ.
このような図形は直線の組み合わせでも描けるが,「多角形」として描画するのが簡単である.多角形を描くには,ツールパレットの「曲線」ツールのメニュー
から「多角形」を選択する.
多角形を上手く描くのは,少々コツが必要で慣れるまでは上手くできないかも知れない.始点から最初の折点はマウスドラッグして,残りの折点は順番にクリックしてゆき,最後の終点だけをダブルクリックすると上手く出来るだろう.
また,一旦,描いた折れ線を微修正するには「制御点」を編集することで出来る.制御点を編集するには,編集したいオブジェクトを選択し,ツールパレットから「制御点」アイコンをクリックするか,Controlキー&クリックで表示されるメニュー
から「制御点の編集」を選択する.これで「制御点編集モード」に入り,各折点の配置位置を微調整できる.「制御点編集モード」を終了して元のモードに戻すには,パレットから「制御点」アイコンを再度クリックする.
尚,制御点を追加するなど,更に細かい制御点編集を行うには,「頂点の編集」ウィンドウの各モードを選択するが,詳細はここでは省略する.
上記の電気抵抗素子のギザギザの間隔を,2倍に広く調整してみよ.
まず,新しいDraw文書を「新規作成」して開き,そこに以下のような簡単な電気回路の図版を新たに作成してからプリントアウトせよ.このとき,回路の下部に各自の学生番号と氏名を入力しておくこと(当然,文字オブジェクトとして入力すること).但し,図版の大きさは幅15cm×高さ10cm程度に収まるようにすることが望ましい.
尚,情報処理教室にはモノクロプリンタしかないので,印刷結果は白黒で構わない.
ヒント:抵抗素子部分は折れ線として描けばよい.また抵抗素子が一つ描けたら,それをCopy & Pasteすれば作図の手間が大幅に省ける.
提出日時:教員の指示による
尚,この電気回路図の作図文書は,後の実習でさらに使う予定見込みなので慌てて削除せずに残しておくこと.
新しい「図形描画」文書を開き,次のようなフロ−チャ−ト(コンピュータプログラムの制御の流れを示すのに用いられる図)を新しく描き,上記その1とは別紙に印刷せよ.図のどこかに各自の学生番号と氏名を入力しておくこと.図版の大きさは幅10cm×高さ10cmのサイズに収まるよう努力すること.
ヒント:ひし形は基本図形の一つとして用意されている.
提出日時:教員の指示による