LibreOffice Impressによるプレゼンテーション

研究成果などを講演発表することを「プレゼンテーション (Presentation)」と呼ぶ.近年では,このプレゼンテーションに用いる「スライド資料」をコンピュータを用いて作成することが一般的である.

プレゼンテーション用のソフトウェアとしてMicrosoft PowerPointが著名であるが,LibreOfficeにもImpressと呼ばれるプレゼンテーションソフトが含まれている.もちろん,Impressで作成した資料は,PowerPoint形式でも保存(エクスポート)出来るので,資料のやり取りに深刻に困ることは無いはずである.(注: それでも若干は困る事も......)

Impressの利用方法が簡潔に纏められた資料としては,OpenOffice.org向けに日本のボランティアチームが作成した書籍のPDF版がこちらにあるので参考にして欲しい.

プレゼンテーション資料の基本的構成

プレゼンテーション資料とは,昔懐かしい紙芝居を電子的に作成したものと考えると良い.つまり,発表したい内容を用意し,それらの発表順序をきちんと考えてまとめる.聴衆に見せたい情報は何枚かの「スライド」に分割して提示し.発表すべきテキスト情報は,通常,箇条書きの形で書かれる.また,内容の理解を助けるためのイラストや写真などもスライドに加えられる.各スライドには,提示内容に加えて,その見出しとなるタイトルも配置される.

タイトルの配置などデザイン上の見栄えについては,予め標準的レイアウトが用意されているから,それを適切に選ぶだけで,素人でも(それなりに)見栄えのするプレゼンテーション資料が簡単に作成出来る.

ここでは,例として,こちらのページのPDF文書に示すサンプルプレゼンテーション資料を作成してみる.

Impressの起動

LibreOfficeを起動し,「プレゼンテーション」を選択するか,或いは,「ファイル」メニュー -> 新規作成 -> プレゼンテーション と選択するとImpressが起動する.

プレゼンテーションウィザード

新しくプレゼンテーション資料を作成する場合,プレゼンテーションウィザードと呼ばれる支援機能を使うと背景デザインなどを「お手軽に」設定できて便利である.これは標準で用意されている予めデザイン済みのテンプレートから新しいプレゼンテーション資料の用意をしてくれる.

「ファイル」メニュー -> ウイザード -> プレゼンテーション と選択すれば,新しく作成する資料のためのプレゼンテーションウイザードが起動する.

ここでは3つの選択肢がある.

練習のため,ここでは,「白紙のプレゼンテーション」から始めるので,それを選択してから,「次へ」ボタンをクリックする.

この画面では,スライドの背景デザインを選択する.ここではmondo_cyanと名付けられた背景デザインを使うので,一覧リストからmondo_cyanを選択する.

また,選択項目「プレゼンテーションの発表方法を選択します」では,「画面」が標準で選択されているはずなので,そのまま選択しておく.ちなみに,この項目によって,プレゼンテーション画面の縦横比を調整できる.通常は,パソコンのモニタ画面上に資料を表示するので,「画面」を選択しておけば良い.

「次へ」ボタンをクリックすると,スライド画面切り替え時の視覚効果や自動画面切り替えなどを調整出来る.

練習のため,ここでは特別な視覚効果など必要ない.そのまま「作成」をクリックすると,Impressの基本作業画面が表示される.

Impressの作業ウィンドウ

画面左側が「スライドパネル」,中央が作業領域,画面右側が作業パネルと呼ばれる.また,画面上下には,LibreOffice WriterやDrawで見かけたものと同様のツールパレットも並んでおり,これらの機能はほぼ同様であると考えればよい.

プレゼンテーション資料を作成する手順は,概ね,以下の手順で進行する.

  1. 新しいスライドを追加する.尚,資料を新規作成する場合,既に最初のスライドが準備された状態となっている.
  2. 追加されたスライドのレイアウトを変更する.
  3. スライドを作る
  4. 1へ戻る

レイアウトを変更するには,画面右の作業パネルのレイアウトタブに表示された各レイアウトから,希望するレイアウトを選択する.良く用いるレイアウト例として,以下のようなものがある.

その他,集計グラフを配置するレウアウトも用意されている.ここでは,最初のスライドを「タイトルスライド」に設定して,発表の表題スライドとして設定してみよ.

スライドレイアウトのフォント調整

ここで,スライドに表示されるテキストのフォントなどを調整しておこう.(後から調整することも出来るようだが.)

スライド全体のレイアウトや使用フォントを調整するには「スライドマスター」を呼び出して行う.「表示」メニューから,「マスター」 -> 「スライドマスター」と選択する.

この画面上で「タイトルテキストの書式を編集するにはクリックします。」と表示されているのがタイトル枠,「アウトラインテキストの書式を編集するにはクリックします。」と表示されているのがテキスト枠である.

タイトル枠をクリックし左上のフォントメニューから「ヒラギノ角ゴ ProN W6」に,また,テキスト枠をクリックしてフォントを「ヒラギノ角ゴ ProN W3」に,それぞれ設定しよう.

上手く調整出来たら,フローティングウィンドウ上の「マスター表示を閉じる」をクリックすると

元の画面に戻る.(或いは,このフローティングウィンドウが何処かへ行ってしまって見当たらない場合は,「表示」メニュー -> 標準を選択すると元の画面に戻れる.)

スライドの作成

スライドのテキスト枠は点線で薄く表示されており,これをクリックすれば文字入力状態となる.また,テキスト枠の大きさや配置は,マウスでハンドルをドラッグして調整することも出来る.文字入力の方法はDrawと同様である.

ここで,講演題目と発表者の氏名(自分の氏名)を入力してみよ.また,講演題目は,枠内で中央寄せ(センタリング)配置とすること.尚,文字配置や大きさなどスタイル設定は,Writerと同様,画面上部のテキストスタイル設定パネルから

必要な項目を選択すれば調整出来る.

プレゼンテーション資料の保存

作成したプレゼンテーション資料を保存するには,「ファイル」メニューから「保存」を選択する.

WriterやDrawと全く同様のファイル保存ダイアログ画面が表示されるから,念のため保存場所を「ホームフォルダ」となるようにし,適切なファイル名をタイプ入力して「保存」ボタンをクリックする.ファイル名の拡張子(.odp)は自動的に付けられる.尚,一旦,保存操作を行うと以降の保存操作では,このダイアログは表示されない.

ファイルの名前は英数モードで入力されるアルファベットと数字だけを使う事を推奨する.

また,Windowsパソコン利用者へファイルを手渡す目的などでMicrosoft PowerPoint形式にて保存したい(エクスポート)場合には,「ファイルの種類」メニューから「Microsoft PowerPoint 97/2000/XP/2003 (.ppt)」など相手の事を考えた適切なファイル形式を選択してから保存すれば良い.

練習

作成した1ページだけから成るプレゼンテーション資料を保存せよ.保存できたら,一旦,Impressを終了した後,再度,起動して保存しておいた資料を読み込んでみよ.

スライドの追加

最初のスライドが出来たら,次のスライドを追加する.これには,「挿入」メニューから,

「スライド」を選択する,又は,画面右上のボタンをクリックする.

ここで,2ページ目のスライドは「タイトル、コンテンツ」のレイアウトとなるようにせよ.

テキストの箇条書きでは,文字を入力した後,リターンキーを押すと,次の箇条書き項目の入力に自動的に切り替わる.また,箇条書き項目の「レベル」を下げる(箇条書き項目の一つに細かい箇条書きを加える)には,TABキーを押す.レベルを上げるにはShiftキー+TABキーをタイプする.また,箇条書き項目レベルを上げたり下げたりするには,ツールバーの矢印アイコンをクリックしても調整できる.

グラフィックスの利用

Impressのスライドには,Drawと同じ要領で図版や画像を入れることが出来る.図版を入れる方法には三つある.

一つは,使いたいグラフィックスや画像データをファイルとして準備しておき,「挿入」メニュー -> 「画像」 -> 「ファイルから」と選択し,ファイル選択ダイアログから該当ファイルを選択する.その選択したグラフィックスがスライドに貼り付けられるから,大きさや配置を調整する.或いは,Finderウィンドウ上で挿入したいグラフィックスファイルのアイコンをドラッグ&ドロップしても良い.

二番目の方法として,Drawの画面を別に開いてグラフィックスを作図しておき,でき上がった図形をコピー&ペーストすることでも貼り付けることが出来る.(今のところ,ドラッグ&ドロップでは上手く行かないようだ.)

三番目の方法は,Impressの画面中で直接に作図することである.ここで,練習として三番目の方法で作図してみる.

画面下のツールパレットから,適当なツールを選べばDrawの場合と全く同じ作業が行える.

ここで,サンプル資料と同様の作図を行ってみよ.尚,「人の頭部」は「曲線」ツールの「多角形」,「人の脳」は「基本シェイプ」の「円の扇形」として描いている.また,塗り色も適宜調整せよ.

また,各図形オブジェクトの描く順番によっては,重なり順序が悪い場合がある.図形オブジェクトの重なりを変えるには,右クリックして表示されるメニュー中の

「整列」項目から,適切なものを選べば良い.

又は,ウィンドウ下のツールバーより,整列アイコンで表示されるメニューから選択しても良い.

スライド3ページ目については,レイアウトを「タイトルと2つのコンテンツ」に設定して,画像入りスライドとして作成している.このページで用いている交通標識の画像は,こちらのリンク先で表示される画像データを各自の作業ディレクトリに保存して利用せよ.Webページに表示されている画像データを各自の作業ディレクトリにコピーするには,保存したい画像をControl+クリックして表示されるメニューより「イメージを別名で保存」を選択し,続いて表示されるダイアログから保存されるフォルダを選択した後に「保存」ボタンをクリックすれば良い.

画像が用意できたら,スライド作業画面のアイコンを

クリックする.ファイル選択ダイアログが表示されるから,保存しておいた画像ファイルを選択して,スライドに貼り付けられた画像の大きさと配置を調整する.

尚,貼り付けた画像の縦横比(アスペクト比)を変えずに(つまり,形を変形させずに)拡大縮小するには,Shiftキーを押しながらハンドルをドラッグすると上手くできる.

また,この例では,道路標識画像の中央にアルファベットNが重ねて配置されている.このテキストオブジェクトと画像オブジェクトの中央を合わせるには,合わせたいオブジェクトをまとめて囲むようにドラッグして同時選択しておき,右クリックして表示されるメニューより,

「配置」項目の適切なものを選択するか,又は,ツールバーの配置アイコンから選択する.

クリップアートの挿入

LibreOfficeの標準状態では,資料作成に使えるクリップアート(挿し絵)が殆ど付いていない.CSE環境ではオープンソースにて開発されているアドオンSozai OOoを追加インストールしてクリップアートを少し増強している.

Sozai OOoは,既に配布した各種フリーソフトウエアインストール用ディスクイメージに含まれているので,LocalBoot環境でも同じくインストールしておく事をお勧めする.

このクリップアートを挿入するには,画面下のツールパレットから,「ギャラリ」アイコンをクリックする.

利用可能なクリップアートが分類表示されるので,使いたいクリップアートを探して右クリックから「挿入」 -> 「コピー」と選択すると,スライドに貼り込まれる.(または,ギャラリ上で見えているクリップアートをドラッグ&ドロップしても出来る.)

尚,サンプル資料4ページ目のクリップアートは,「人々 OpenClipart」のカテゴリにあるはずだ.

ギャラリを閉じるには,ギャラリアイコンを再度クリックする.

スライドマスターによる背景画像の調整

サンプル資料には,全てのスライド右下に本学学章  が配置されている.このように全スライドに共通に表示される内容を持っているスライドを「スライドマスター」と呼ぶ.本学学章の画像をホームフォルダに保存しておき,それを使って作成中のスライド全ページに表示させてみよう.

Safariに表示されている画像を手元に画像ファイルとして保存するには,当該画像上で右クリックして表示されるメニューより

「イメージを別名で保存」を選択すると保存ダイアログが表示されるので,保存先を指示すれば良い.

スライドマスターを修正・変更するには,「表示」メニューから,「マスター」 -> 「スライドマスター」と選択する.

この画面にテキストやグラフィックスを配置すると,全てのスライドに渡って共通に表示される.

ここで,上記の本学学章の画像をスライドマスター右下に配置してみよう.

「挿入」メニュー -> 画像 -> ファイルから と選択し,表示されたダイアログで本学学章の画像ファイルを選択してやればマスタースライドに貼り付けられるので,位置を右下の程よい場所に調整する.

マスタースライドの調整が終わったら,マスター表示パレットより,「マスター表示を閉じる」をクリックすると,通常の作業画面へ戻る.(或いは,このパレットウィンドウが何処かへ行ってしまって見当たらない場合は,「表示」メニュー -> 標準を選択すると元の画面に戻れる.)

練習

サンプル資料を真似して,同様のプレゼンテーション資料を完成させてみよ.

資料のスライド順序入れ替え全体調整とアウトライン表示

各スライドの順番の入れ替えは,作業ウィンドウ左のパネルに縮小表示された各スライドを示すアイコンをドラッグ&ドロップすれば良い.

練習

4枚目のスライドを先頭に移動し,2枚目のスライドを最後に移動してみよ.移動できたら,元の順序へ戻してみよ.

アウトライン表示

各スライドに書かれたテキスト内容は,作業領域の「アウトライン」タブを選択することで,全体を眺めることが出来る.

ここでも,スライド順番を入れ替えることが出来る.スライドを入れ替えるには,スライドアイコンをドラッグ&ドロップすれば良い.

また,箇条書きの項目も,ドラッグ&ドロップで順番を入れ替えたり,或いは,スライド間で移動させたり出来る.さらに,箇条書きレベルも通常のスライド作成時と同様の矢印アイコン

をクリックすることで,調整出来る.

尚,このアウトライン表示は「標準」タブをクリックすれば,元の作業画面へ戻る.

練習

箇条書きの項目を他のスライドに移動したり,また,箇条書きレベルを適当に変更してみよ.また,「標準」作業画面に切り替えて,箇条書きの変更された状態を確認せよ.

スライドショーの実行

でき上がったプレゼンテーション資料を上演することを「スライドショー」と呼ぶ,スライドショーを実行するには,「スライドショー」メニューから「スライドショー」を選択する.

スライドショーの進行操作

各スライドの切り替え進行は,次のようにマウス(又はキーボード)を操作する.

スライド切り替えの視覚効果やオブジェクトのアニメーション表示など

スライドのページ切り替えに際しては,「スライドが右から左に動くように切り替わるワイプ」や「かすむように切り替わるフェードイン・フェードアウト」などが使える.また,スライドに配置されたテキストやクリップアートが移動して見えるアニメーション効果なども使えるが,時間の都合上,本演習では解説しない.

プレゼンテーションで何より大事なのは,内容(きちんとまとまっているか? 分かり易く整理されているか?)であり,資料作成時には,まず内容を準備することを最優先して考えること.視覚効果ばかり凝っていて内容の伴わないプレゼンテーションは,「単なる見掛け倒し」として,視覚効果を付けない場合よりも,印象(評価)が悪くなる危険性が高いことを意識しておくこと.

提出課題

以下のテーマについて,プレゼンテーション資料をLibreOffice Impressで作成せよ.但し,作成する資料ファイル名は ユーザ名.odp となるようにすること.

テーマ: 「コンピュータと私」

などを踏まえて,発表時間5分間を想定して作成すること.尚,5分間のプレゼンテーションであれば,表紙も含めて,約6から7枚程度のスライド枚数になる.

〆切: 教員の指示による

提出方法: moodle学習支援システムよりファイルアップロードによるファイル提出(基礎プログラミング演習Iコース向け課題としてmoodle上に設定済)moodle学習支援システムの利用マニュアルはmoodleにログインすればウィンドウ右側にリンクが表示されているので,そちらをアクセスのこと.

尚,提出ファイルのファイル名は ログインユーザ名.odp という形で付けるように十分に注意すること.例えば,ユーザ名がg123456の場合,提出ファイル名は g123456.odp とせよ.また,このファイル名を指示する際には「英数キー」を押した状態で入力される英数字(いわゆる半角文字,半角文字については「日本語漢字コード」の節で説明予定)のみを用いること.

このファイル名に関する約束を守っていない場合は,採点対象外となる危険性が多少ある.

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